大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 昭和53年(借チ)38号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

1 本件資料によれば、本件土地は、東急東横線ないし幹線道路である放射三号線目黒通りと東急田園都市線ないし同目蒲線と幹線道路である環状七号線道路に囲まれたほぼ三角形の区域の略中央にあつて、東急田園都市線および同目蒲線大岡山駅から直線距離にして北西約七〇〇m(徒歩約一〇分)、縁ケ丘駅から東北へほぼ右同距離、東急東横線都立大学駅へ約九〇〇m環状七号線道路から南西約四〇〇mの位置に存すること、本件土地の存する目黒区大岡山一丁目は、いずれも道路を隔ててその南に大岡山二丁目、右一、二丁目に西隣して緑ケ丘一丁目、緑ケ丘一丁目の北側で大岡山一丁目の北西に中根二丁目、大岡山一丁目の北側は平町二丁目、北東ないし東に南三丁目、東には大田区北千束一丁目が存すること、これら地域のうち大岡山一丁目には公共施設としては小学校のゲランド、幼稚園、児童遊園地、消防出張所各一が存するのみであり、また高層人規模建物と認められるものは後記の通り僅かに一つのみであるのに反し、その余には大学、小、中学校、幼稚園、大規模病院が相当数存する外、高層大規模と認められるマンションが存し、これらの施設建物は窺われる規模からして多く高層の堅固建物と認められること、大岡山一丁目は、大岡山駅(北千束一丁目所在)北口商店街の圏勢を維持する背後普通住宅地と判断され、現在では、木造住宅(一戸建住宅、共同住宅)のかが多いこと、本件土地は大岡山一丁目の略北東部分の中央に存し、北東側は巾員約五mの舗装公道に面していること、本件土地の存する大岡山一丁目には、本件土地の南西ほぼ一〇〇ないし一九〇mの距離を隔てた同町二五、三〇、三一番に六棟(内一棟は七階建のマンションのコーポ大岡山)、南東ほぼ一二〇ないし一五〇mの距離を隔てた同町四、一〇、一七番に六棟、東北ほぼ一〇〇mの距離を隔てた同町一三番に二棟の、いずれも前記七階建マンション一棟を除き二ないし三階建の堅固建物と認められる建物が存すること、これら建物は、いずれも築後間もないものと認めること、右以外に大岡山一丁目には高層建物、堅固建物の存することが認められず、右状況から本件土地の存する同町一五番と、その北ないし西部分の大岡山一丁目には未だ堅固建物が存しないこととなること、本件土地の最有効使用は、普通住宅用地と判定されること、一方本件土地の存在する人岡山一丁目一五番の街区の北側部分には、東西に通ずる補助四六号線の、前記南三丁目、北千束一丁目には、右補助四六号線から分岐(分岐点南三丁目地内)する補助四八号線(いずれも巾員三〇m)の都市計画道路の計画が存すること、建設省では、宅地の供給不足に対応し、今後一〇ないし二〇年をかけて、第一種住居専用地区を廃止し、東京都区部の中層化を図るべく東京都を指導することの計画を立案中であることが認められる。

2 以上によれば、本件土地の存する東京都目黒区大岡山一丁目は、これに隣接する周辺の地域が各種公共施設やマンション等高層堅固建物が多く混存する地域ないし商業地域であるに比し、純然たる住宅地域であることが認められるのであつて、このことからすれば借地法八条の二第一項の本件上地の「附近の土地」とは、広くともほぼ右大岡山一丁目と認めるべく、しかして右大岡山一丁目には堅固建物が存在するものの僅かであり、しかもそれらは都市計画法上の法規制のためと考えられるか一般的には低層従つて小規模のものであつて、本件賃貸借契約締結当届時においては、堅固建物が皆無に等しかつたと考えられるが(本件土地の準防火地区の指定年月日、附近の土地のこれら法規制は明らかでない)、右事情のもとでは、未だ右条項の「附近ノ土地ノ利用状況ノ変化・……ニ因リ現ニ借地権ヲ設定スルニ於テハ堅固ノ建物ノ所有ヲ目的トスルコトヲ相当トスルニ至リタル場合」に該るとは認め難いのみならず、また本件においては、「其ノ他ノ事情ノ変更」があつて借地条件の変更を相当とするに足る事情も存するのは認め難い(準防火地域の指定をもつて防火地域の指定と同視することはできない)。もつとも、本件においては、本件土地の至近の距離に都市計画法上の道路計画が存するけれどもこれが具体的に実施される時期なりは不明であり、また未だ右計画の存することにより現にもしくは近い将来において借地条件の変更を相当とするに足る附近の土地の現実の利用状況に現に変化がありもしくは変化が見込まれる状況にあるとは認め難いのである。更には国において東京部区部における中層化のための第一種住居専用地域の見直計画があるからといつて、これが直ちにないし近い将来殊に本件土地附近において実施に移されるとは俄かに断定し難いから右計画の存することの事をもつて右「其ノ他ノ事情ノ変更」があるとも認めることは困難である。結局本件申立は、借地法八条の二第一項による借地条件の変更を認めるに足る相当性を欠くものといわざるをえない。

(櫻井登美雄)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!